Research研究テーマ
#002
計算科学・データ科学手法を駆使した新物質・新材料探索
材料科学、計算科学、データ科学の融合により、データ駆動で新物質・新材料の開拓を加速し、同時に物質・材料の系統的な理解や設計・探索指針の構築に繋げようとする試みが世界的に盛んになっています。いわゆる「マテリアルズインフォマティクス」によるアプローチです。
当研究室では、膨大な第一原理計算のデータを蓄積し、そこから効率的かつ自動的に有望な物質を選び出すin silico(計算機中)ハイスループットスクリーニング技術の開発を進めています。図1に示すように、多様な候補物質を対象に特性や安定性の計算を行い、有望な物質を選定します。その予測結果を連携している実験グループに提案することで、新しい物質や材料の開拓を加速することが目標です。このシナリオを実現するため、計算手法の開発や計算の自動化に取り組んでいます。図2に示す新しい窒化物半導体の予測と実証の例のように、具体的な材料開発に関する成果も得られています。また、図3に示すような第一原理格子動力学計算及び進化的アルゴリズムに基づいた結晶構造の予測も進めています。
さらには、高信頼性計算データを機械学習し、物質の特性や安定性の予測モデルを構築することで、新物質・新材料探索の飛躍的な効率化を目指しています。また、多様な観点から膨大なデータを解析することで物質・材料を俯瞰的に理解し、新たな視点での学理の構築につなげようとしています。

図1.in silico(計算機中)ハイスループットスクリーニングによる新物質探索の概念図
膨大な数の候補物質から、特性や安定性の観点で有望と考えられる物質を的確に選び出し、連携している実験グループに実験対象として提案します。

図2.in silico(計算機中)ハイスループットスクリーニングによる新物質探索の具体例
希少元素を含まず、赤色発光を示す新しい窒化物半導体CaZn2N2の存在を予測し、共同研究者が実験により実証しました。 東工大の平松准教授、細野教授、京大(当時)の日沼研究員、京大の田中教授らとの共同研究の成果で、2016年6月にNature Communications誌に掲載されました。また、日経産業新聞、化学工業日報、日刊工業新聞、産経新聞、共同通信、京都新聞、南日本新聞、科学新聞、日刊産業新聞、毎日新聞、マイナビニュースなど、様々なメディアで取り上げられました。 この他にも、未報告であったSrZn2N2とYZn3N3を予測し、合成に成功しました。

図3.アンチペロブスカイト化合物の理論的探索
第一原理格子動力学計算及び進化的アルゴリズムに基づいた結晶構造予測法により、半導体として有望と考えられる新しいアンチペロブスカイト化合物を提案しました。またポーラーメタルとして振る舞うことが期待されるアンチペロブスカイト化合物の予測も行っています。