Research研究テーマ
#003
材料特性の高精度・高速予測手法の開発と応用
無機材料の様々な基礎物性や表面、界面、点欠陥等の特性を高精度かつ高速に予測するための計算手法の開発を進めています。例えば図1に示す半導体のバンドアライメントは、半導体材料やデバイスを設計する上で最も基本的かつ重要な情報です。最近になって、第一原理計算の手法・近似を突き詰めることで、バンドギャップだけでなく、バンドの絶対的な位置の実験値をよく再現できるようになってきました。これにより実験値が報告されていない物質についても高精度な予測が可能であり、半導体材料としてのポテンシャルを評価できます。また半導体ヘテロ界面におけるバンドオフセットも同様に予測できます。その他、図2に示す点欠陥のセルサイズ補正など、基礎物性や格子欠陥の特性の高精度かつ系統的な予測のための計算手法の開発と新物質・新材料の探索への応用を進めています。

図1.半導体表面のバンドアライメントの高精度理論予測
多体摂動論に基づいた高精度な第一原理計算により、バンドギャップだけでなく、バンド位置の実験値(Mönch, Semiconductor Surfaces and Interfaces, 2001)がよく再現されています。この計算手法を使えば、実験値が報告されていない物質についても信頼性の高い理論予測が可能と言えます。しかし、このような高精度計算は最先端のスーパーコンピュータを用いたとしても大変であるため、多数の物質を対象にした研究に応用するのは困難です。そこで、精度をできる限り保ちつつ計算コストを下げることができる計算手法の開発を進めています。

図2.半導体および絶縁体の点欠陥計算の高精度化
3次元周期的境界条件下での点欠陥計算モデル(スーパーセル)における荷電した点欠陥間並びに点欠陥と補償電荷間の静電相互作用を補正することで、希薄な点欠陥の形成エネルギー、電子準位、光学遷移エネルギー等を高精度に理論予測できるようになりました。